新文芸坐で映画『her/世界でひとつの彼女』(2013年、監督・脚本:スパイク・ジョーンズ)を鑑賞。コンピューターの人工知能型OS(オペレーティングシステム)に恋をする男を描いたSF映画。
機械に恋するという設定は目新しくないが、恋愛対象が実体を持たずに声だけというのは斬新。主人公(ホアキン・フェニックス)が恋するOSの声をスカーレット・ヨハンソンが好演しているのにも注目したい。
基本的には二人の会話劇なので、ぜひ二人のセリフを楽しめる字幕版で見てほしい。脚本もすばらしい。ちなみに吹替版では林原めぐみがOSの声を当てている模様。
ラストでOSは、主人公の他に並行して多数の人と恋愛していることがわかり、主人公が困惑する。オブジェクト指向的に言えば、1つのクラスに複数のインスタンスがあったというところか。
終盤、街を歩く人がみなスマートフォンのようなデバイスを見ながら歩くシーンがある。この光景は外国人から見れば奇妙なのだろうが、いまの東京では歩きスマホをしている人ばかりなので、それほど奇異に感じなかった。日本恐るべし。
またSFとしての舞台設定はなかなかよくできている。天気予報の情報から舞台は近未来のロサンゼルスのようだが、地下鉄があったり現在の様子とは違うところがにくい。またベルトの位置が高いボトムなどファッションもなかなか面白い。
何より代筆業を生業にしている主人公がすごく豪華な住居に住んでいることに驚く。どんな社会システムなのか興味があるが詳しい説明はない。
もちろん突っ込みどころもある。あれほど画期的な人工知能を開発したなら、もっと別の用途に使うのはないかとも思うが、細かい事は考えずに会話劇を楽しむのがよさそうだ。
この映画にあるようなOSとの恋愛は無理にしても、そう遠くない将来、定型的な業務は人工知能をもつ専用秘書アプリが仕事をサポートしてくれるようになるかもしれない。そんなことを予感させる映画だ。
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