映画俳優の高倉健さんの訃報が報じられました。83歳でした。最後の銀幕スターのひとりと言ってもいい俳優でした。いよいよ昭和も遠くなりました。
健さんは東映時代から数多くの映画で活躍したきたので、輝かしいフィルモグラフィーを残しています。いずれ名画座でも追悼上映が企画されるでしょうが、高倉健さん出演作のなかで、いま見てみたい作品を3つ挙げてみます。どうしても初期の作品に偏ってしまいます。
網走番外地(1965年、監督:石井輝男)
高倉健の出世作であるとともに、石井輝男はカルト映画だけでなく王道の娯楽作品をも撮れることを世に知らしめた記念すべき一作。シリーズ第一作。
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貧農出身のヤクザ・高倉健が網走刑務所に収監される。母の病が重篤で刑期終了までもつか分からないと知った健さんが刑務所から脱走する。
前半の受刑者たちの生活の描写が興味深いし、後半の保護司・丹波哲郎がトロッコで追跡するシーンが強烈な印象を残す。二人が手錠でつながれたまま脱走するのはアメリカ映画『手錠のまゝの脱獄』(1958年)のパクリなのはご愛嬌か。
当時、東映としては白黒映画でヒロイン不在という添え物映画だったが、大ヒットしてシリーズ化される。
緋牡丹博徒 花札勝負(1969年、監督:加藤泰)
健さんは「日本侠客伝」シリーズ、「昭和残侠伝」シリーズなどの任侠モノが代表作とされるが、私は正直いうとこの類の映画はやや苦手である。しかし藤純子主演の「緋牡丹博徒」シリーズは別。
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高倉健さんはこのシリーズにいくつか助演しているが、『緋牡丹博徒 花札勝負』が記憶に残る。最後の殴り込みに、健さんは途中から参入するという役回り。
紋切り型の任侠映画の「お約束」を確認しながら、藤純子と高倉健の両スターを楽しめるという一粒で二度美味しいというお得な映画。
君よ憤怒の河を渉れ(1978年、監督:佐藤純彌)
カルト映画。なぜか中国で人気を博してヒロインの中野良子は日中交流の文化交流大使となる。健さんは無実の罪を着せられてひたすら逃亡する検事を演じている。ハリソン・フォードの『逃亡者』の日本版とも言うべき映画。
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しかし「北海道で熊を撃つ健さん」「焚き火での濡れ場」「数分のレクチャでセスナを操縦して自衛隊のスクランブルを受ける健さん」「新宿に出現する馬の群れ」、そして「ラストの『正当防衛』という名の私刑」など、ツッコミどころ満載のカルト映画。