退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

企画展「石の世界と宮沢賢治」@国立科学博物館

少し前になりますが、上野の国立科学博物館で企画展「石の世界と宮沢賢治」を見てきました。常設展示の料金で見学できます。6月15日まで。
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「鉱物」と「宮沢賢治」とは、結びつかないと思われがちですが、賢治は盛岡高等農林学校で地学を学び、指導教官に母校の助教授に就任することを勧められるほど優秀でした。いまでいう大学の理学部地学科のようなところだったようです。賢治は文学者で有名だっただけでなく、各地で地質図を作成するなどの地質学者としての側面ももっていました。実際、彼の作品には鉱物関係の名前が多く登場しています。この企画展ではそうした宮沢賢治の世界を紹介しています。これまでになかったユニークな展覧会です。

会場に入るとすぐに、蒸気機関車の写真を背景にした自筆メモ「雨ニモマケズ」が目に入ります。「サウイフモノニ/ワタシハナリタイ」で終わる賢治の代表作のひとつとされるものです。うれしい演出です。
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まず高等農林学校にドイツで地学を修めた教官が配属されていたのに驚きました。明治時代の教育の層の厚さと言えるでしょうか。近代化に向けた日本の勢いを感じられます。賢治自身も、展示されていた蔵書に英語やドイツ語の原書がありインテリだったことがうかがえます。地方に賢治のような人材がいた時代が日本にもあったと思うと隔世の館があります。いまや東京一極集中がひどい。人材もカネも……。

順路にしたがって見学すると、賢治の生涯をひととおりなぞることができる構成になっていて、地質学者としての足跡や鉱物関係のバックグラウンドと文学作品との関わりなどがわかります。故郷・岩手の当時の雰囲気を伝えているのもこの展示会のいいところだと感じます。

また、近くにある東京国立博物館(トーハク)と、ここ国立科学博物館の関係を紹介する展示もあり、さりげなく存在をアピールしているのは愛嬌というところでしょうか。多くの人はどこが違うのか分かりにくいと思いますよね。

今回、常設展示も半分ぐらい見てきました。教育目標という位置づけなのか、やや子ども向けという感じがしますがなかなか楽しいです。時間があるときに行けばよかった。あと歴史のある建物も見る価値があります。国立西洋美術館の方から歩いてくると、目に入る建物にはなかなかの威容があります。ぜひ会期中に行ってみてはいかがでしょう。
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