文章が読みやすい。これがライター文体か。編集者の力量によるものだろうが、構成も練ってありとにかく読みやすい。ターゲットにしている読書習慣のない若い世代にも、容易に読みこなせる程度にレベルが設定してあるのだろう。売れているところをみると、内容も彼らに刺さっているようだ。
この本の読みどころは、ホリエモンの幼少期や中高時代、そして大学進学のため上京するあたり。主に本書の前半で語られる自叙伝的な部分である。
私立の中高一貫校から東大というキャリアから、地方の裕福な家庭で育ったと思っていたが、そうでもなかった。私立校に通わせる経済力はあったのだから貧困家庭というわけではないが、中流家庭というところだろう。しかも、かなり変わった家庭環境である。ホリエモンを育んだ環境を垣間見れて興味深い。
そして田舎から抜け出すために、有無を言わせない進学先として東大を志望校に決めて、現役合格を果たすあたりはさすがというべきだろうか。冴えない地方出身者として上京し、駒場寮に入るが東大に幻滅するあたりも面白い。
一方、後半はホリエモンの人生論を中心に語られていて多少説教くさい。どう感じるかは人それぞれだろうが、若年層には訴求するのだろう。最後のページが、「はたらこう。」という言葉で結ばれているのが象徴的である。
また収監中、実父から手紙が届いたが、結局、返事を出さなかったというエピソードが紹介されている。わざわざ本のなかで披瀝する話かなとも思うが、いい話ではある。ちょっとしんみりとする。