退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『100,000年後の安全』(2009)

都知事選挙で「脱原発」を争点とする動きがあった影響でしょうか、フィンランドの「核のゴミ」の最終処分場を紹介するドキュメンタリー映画100,000年後の安全」が無料配信されていました。

100,000年後の安全 [DVD]

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オンカロ」とは

この映画ではフィンランド放射線廃棄物最終処分場「オンカロ」が描かれます。小泉元首相が本作を観て、映画の中で描かれた「オンカロ」を視察で訪れ、自らの意見を"脱原発"に大きく転換するきっかけとなったとされてます。

オンカロ」では、高レベル放射線廃棄物を、数億年程度地殻変動がなかった安定した地層の地下約500メートルに処分するための施設です。映画のなかで廃棄物がどのように収容されているのか見られると思いましたが、まだ建設中のため映しだされるのは暗い採掘現場のみ。CGで巨大な地下都市のような構想が描かれるだけなのでやや期待はずれでした。

興味深いのは、「核のゴミ」を収容した後は埋め戻して、とくに管理をしないでスルー、「なかったこと」にするという発想です。オンカロの関係者によれば、埋め戻した土地には立ち退いてもらった住民に子孫が住んでほしいとのこと。安全に絶対の自信があるのでしょうが、根拠が提示されず関係者は終始楽観的なのが気になります。

未来に向けて

処分した廃棄物が無害になるのに10万年かかるとされます。文明の発祥がせいぜい5000年前ぐらいとしても10万年というスパンがいかに長いか分かります。映画の後半は、その未来の人類(?)に向けてこの施設の危険性をいかに伝えるかを大真面目で語っているところが面白いです。

モノリス型やキヨスク型と呼ばれる標識をつくって施設の危険を国連公用語で警告するアイデアもあるようです。モノリス型のスケッチはまるでキューブリック監督の映画「2001年宇宙の旅」のようです。数万年後となると完全にSFですね。

また、どんなに「危険だから開けるな!」と警告してもこれまで考古学者が遺跡を発掘してきたように、オンカロも「発掘」されてしまうのではという懸念が示されますが、とくに対策はないようです。「線量計があれば危険性に気付くよ」とか「その程度の科学技術がないとそこまで掘れないよ」という議論もあり、すっかり他人事です。まあ数万年後ですから誰にもわかりません。

日本はどうなのか

翻って日本はどうでしょう。「トイレのないマンション」問題は、以前より指摘されていますが全く解決の道筋が見えません。フィンランドとは比較できないほど大量の廃棄物が出る日本はどうするのでしょう。

日本には安定した地層なんてどこにもないです。そもそも火山や地震が多い日本では地層処分は無理でしょう。その点ではフィンランドでみたオンカロはあまり参考になりそうにないです。

この映画ではオンカロの設置場所の選定プロセスや住民の反応は描かれてませんが、日本だと場所を決めるだけで大変な困難が予想されます。フクシマの除染作業で出た廃棄物の一時保管場所を決めるだけでも大混乱してますからね……。

日本では最終処分場の問題は当面動きはなさそうです。これこそ「未来へバトンタッチ」というか単なる「先送り」することになりそうです。いったいどうなるでしょう。やれやれ。