雑誌『中央公論』(2013年12月号)の特集は、「壊死する地方都市」という過激なタイトルだった。国家の将来ビジョンを考える際、まず把握すべきは人口動態でである。これから本格的な人口減少社会を迎えるのは不可避であり、全国が「限界自治体化」するおそれがあると警鐘を鳴らす。
この特集のなかで「人口のブラックホール」という言葉が使われていた。高屋良樹のコミック『強殖装甲ガイバー』で十二神将のひとりギュオーが創りだした「人工ブラックホール」ではなく、「人口」のブラックホールである。
戦後、オイルショック(1960-1973)、バルブ崩壊(1980-90年代)、そして2000年以降と三度にわたり地方から大都市圏(主に東京圏)へ大きな人口流出が起きた。移動したのは主に将来子どもを産む若年層が中心である。
しかし大都市圏では住宅事情や出産育児に対するサポートの弱さなどにより出産率は低くとどまっていて、人口再生産ができていない。
つまり地方から大都市圏へ人口移動が起こるが、大都市圏でその人口をすり潰している。東京圏をはじめとする大都市圏に日本全体から人口が吸い寄せられて消滅する。つまり「人口のブラックホール」というわけだ。
「ブラックホール」というのは、なかなか面白いネーミングだ。しかし「ブラックホール」に引きせられた一人として言わせてもらえば、大都市圏で出産率が低いのは上に挙げられた理由だけではなくてもっと複雑な要因があるように思う。
東京には旧来の家族制度に価値を認めないような人たちを含めいろんな価値観を持つ奴が集まってきている。だから面白い。