まず、黒田龍之助って名前がカッコイイ。この本は「フリーランス」語学教師として活躍している筆者のエッセイ集。文庫になって本当にポケットに入るようになった。
黒田さんの本は、これまで何冊か読んでいた。専門家でもないのに英語の講義をしたり、日本語の文章講座を開講しりしていったいどんな人なのだろうと思ったので、自身のキャリアを綴った第五章「ことばへの異常な愛情」は、とくに興味深く読んだ。人生彩々。
工学部の学生だった身としては、東工大や明治大学理工学部で教鞭をとっていたときのエピソードが楽しい。理系学生を観察して「変化表」厨が多いというのは「あるある」と納得だ。さすがに語学の講義中に他の教科書を開く猛者はいなかったけど。
こんな中で自主ゼミができるなんてすごい。人望ありすぎ。学生時代そんな先生に習いたかった。
記憶を辿ると理系学部の学生にとって、教養課程の語学教師は専門課程の教員に比べて1枚も2枚も格下だ。将来避けられない英語はともかく、第2外国語なんて「なんで俺がこんなものやらなけれいけないんだ!」と息巻く学生も多数。
一方の教師側も学生の何倍も「なんで私がこんな学生に教えなければいけないよっ!」と心のなかで叫んでいただろうが、それも給料分だから我慢してください。
そうは言っても語学の単位を落とすと、すぐに進級に「黄信号」が点灯したらから、学生は最小限の努力で最大の効果が得られるように苦心していたものだ。何もかも懐かしい。