退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『タイピスト!』/ タイプライター早打ちで世界を獲れた時代

新文芸坐で映画「タイピスト!」(2012年、レジス・ロワンサル監督)を鑑賞する。併映は「大統領の料理人」。フランス映画2本立て。

舞台は1950年代のフランス。田舎娘ローズ(デボラ・フランソワ )は父親からの縁談を断り田舎町を離れ、ルイ(ロマン・デュリス)が経営する保険代理店の秘書として働くことになる。ローズの〈タイプライター早打ち〉の才能に気付いたルイは、二人で世界を目指すためスポ根まがいの特訓を始める。

映画はベタなロマンス・コメディなのだが、不思議と飽きないで最後まで見ることができた。オードリー・ヘプバーンマリリン・モンローといったスターへのオマージュや、ヒッチコックワイルダーの作品を彷彿とさせる場面があることも一因だろうか。

この類の映画はヒロインがカワイイとすべてOKということはままあるが、今回のヒロインは美人ではあるがちょっとバタくさい。日本向にはもうちょっとロリっぽい方が好まれるかもしれない。しかも二人が男女の関係になる場面で直接的なベッドシーン(軽めですが……)が挿入されているのもフランスらしいなと思った。日本なら軽く暗示するぐらいかな、と。

映画とは離れるが驚いたのは、当時、〈タイプライター早打ち〉が競技として認知されていて、世界大会まであったことだ。映画ではニューヨークでかなり派手な演出で世界大会が開催されていた。フランス国内で大会があるのはわからなくもないが、言語がちがう競技者で大会が成立したのだろうか。映画ではなぜか韓国代表が混じっていた。どう考えても欧文文字の国だけだろと思ったが、あれはギャグだったのだろうか。

劇中、「フランス語に最適化されたタイプライター」というのが登場するが、調べてみるとフランス語で使われているタイプライターのキー配列(AZERTY配列)は、英語圏のそれ(QWERTY配列)とはちがうようだ。文字「z」を多用するから合理的ということらしい(下の写真参照)。なるほど世界は広い。

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photo by Leo Reynolds


映画『タイピスト!』予告編 - YouTube