重度のアルコール依存症になったベテラン漫画家・吾妻ひでおが、アル中病棟に担ぎ込まれる。彼自身の退院までの入院生活を客観的視点で描く330ページ余りに及ぶ大作。アル中のこともよくわかる。
作者の実体験を基にしているので、入院患者や病院のスタッフとたちの関わりを含め入院生活がとても緻密に描かれてる。絵柄は前作に比べてしっかり背景まで描かれていて描き込みが多い。ぜひ大判でよんでみたい。内容・絵柄ともに密度の高い作品です。
この作品は、テーマがアル中だから仕方ないが、落ちついているというか総じて暗い。救いは看護師などの女性キャラクターがかわいく描かれていること。それだけでも読む価値がある。吾妻ひでお健在なり。
ショックなのは、アルコール依存症は根治できないという事実。スリップ(酒を飲んでしまうこと)したら元の木阿弥になり、一生楽しく酒を飲み交わすということができないのだ。あまりにも悲しい現実。医療の進歩でなんとかならないものだろうか。まあ、患者の自業自得だから創薬の優先度は低いだろうけど……。
前作の『失踪日記』が上梓されてからはや8年。その間にでた本は正直感心しなかったけど本作はすごい。前作と合わせて「マンガ史上に残る傑作」と言ったら言い過ぎかもしれないが、自信を持ってオススメします。
余談だが2000年頃、『お宝ワイドショー』という芸能人のお宝写真を扱う雑誌で吾妻ひでおさんが連載していて、楽しみに読んでいた記憶がある。毎号のページ数は少なかったが大判ページで読めて幸せだった。その連載の原稿が『失踪日記』に収録されて、賞を多数受賞するなど高い評価を受けてびっくりしたことがある。