漫画家の吾妻ひでおさんの訃報が届いた。69歳だった。
自らの失踪経験やアルコール依存症治療体験を綴った『失踪日記』(2005年)で注目を集めたことから、訃報を伝えるニュースには『失踪日記』を代表作とする記事が多かったが、私はちがうように思う。
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やはり70年代後半から80年代前半にかけてのブームの頃に描かれた作品こそが、代表作とされるべきだろう。『やけくそ天使』や『オリンポスのポロン』『不条理日記』『ななこSOS』などの作品である。とくに『オリンポスのポロン』や『ななこSOS』はアニメ化され、当時としては最も成功した漫画家のひとりとして認知されていたように思う。
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その後、低迷期を迎えるが、その当時の様子は『失踪日記』で作品化されている。自分のことを描く、私小説的なコミックはいまでこそよく見かけるが、吾妻ひでおが切り拓いたジャンルと言えるかもしれない。
昔、私は「お宝写真」を載せたムックで吾妻ひでおの連載を見つけて、こんなところで描いているかと思ったことがある。配管工のエピソードが印象に残っていたが、その後、『失踪日記』にまとめられて驚いた。作品を評価できる編集者がいたのはさいわいだったというべきか。
原画展ファンとしては、原画展などで実際に生原稿を見てみたいが、吾妻ひでおの場合は原画は散逸しているのではないかと懸念する。テレビアニメ『ななこSOS』も見直してみたいものだ。
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若い頃に影響を受けた人物が亡くなっていくのは世の常、とはいえやはり悲しい。