退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

林壮一『ドキュメント 底辺のアメリカ人』

ドキュメント 底辺のアメリカ人 (光文社新書)

ドキュメント 底辺のアメリカ人 (光文社新書)

前著『アメリカ下層教育現場』に感銘を受けたので、本書も手に取った。米大統領選挙の期間中に、米国各地でマイノリティの人たち(必ずしも底辺ではないと思う)を中心に取材することで、米国が抱える問題を明らかにし、同時にオバマ大統領への期待をも描きだすドキュメント。

インタヴュー取材に基づいているので内容に力強さを感じる一方で、これらはそれぞれ一意見・一局面に過ぎないわけで、米国の全体像を抑えるためには、もっとマクロな分析にあたる必要があるとも感じる。それでも大統領選を通して「米国の今」を切り取ったドキュメントとしてたいへん魅力的であり、一気に読み通してしまった。

翻ってなにかと米国に追従している日本としては、いま米国で起こっている問題は、やがてわが国でも問題になるのだろうか心配にもなった。とくに米国で健康保険の充実を求める声が多いのが印象的だった。日本では皆健康保険を標榜しているが、最近無保険の人が増加しているとも聞く。この本を読んで、日本の将来は大丈夫だろうか、という懸念が心をよぎった。