退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

『女渡世人 おたの申します』(1971)

ラピュタ阿佐ヶ谷山下耕作監督特集で鑑賞。1971年、東映作品。

藤純子主演の任侠シリーズ「女渡世人」の第2作だが、結婚引退により本作で打ち切られている。

敵役の悪行に業を煮やして最後は殴りこみという東映任侠シリーズのパターンを踏襲しているものの、これまでにない密度の高い演出がなされている。脚本がすばらしい。

主演の藤純子は、もちろん強いのだが、「日陰に咲く花」という社会的立場がより強調されていて、哀愁を湛えた女の顔が前面に出ている。とくに三益愛子との掛け合いでは、なかなかいい芝居をみせている。

一方で敵役は、遠藤辰雄金子信雄のコンビで豪華なのも見どころである。

藤純子は指を詰めたり、殴り込みの後、官憲に捕らえられたりして、ふだんとは違った展開を見せる。既に引退が決まっていて、シリーズの存続を考える必要がなく、思い切ったストーリーが可能だったのかもしれない。

本作は、山下耕作×笠原和夫コンビで到達した、任侠映画のひとつの頂点という気さえする。同時に、藤純子の引退、日本映画の凋落の前の一瞬の煌きだったのだろうか。

なかなかの名作だと思うのだが、DVDになっていないのは残念。

(追記)ついにDVD出ました

女渡世人 おたの申します【DVD】

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  • 発売日: 2012/04/21
  • メディア: DVD