新文芸坐の《魅惑のクールビューティ 追悼 江波杏子》で映画『女賭博師みだれ壷』(1968年、監督: 田中重雄)を鑑賞。江波杏子主演の「女賭博師」シリーズの第11弾。「みだれ壺」というタイトルですが、なぜか花札勝負です。
江波杏子といえば、「女賭博師」シリーズの昇り竜のお銀を思い浮かべる人も多いでしょう。長年の下積みを経て、ケガをした若尾文子の代役としてようやく獲得した初主演作の女賭博師役が見事にハマり、シリーズ化されます。本作はシリーズ第11作。この時期になると女賭博師役が板に付いてして貫禄十分。シリーズ化されたのも納得のカッコよさです。
だるま大師の1年間の出店の権利を賭けた大勝負に敗れた銀子(江波杏子)は、雪辱を期して修行の旅に出る。さまざまな賭博師たちの因縁が絡み合うなか、翌年の大勝負の日を迎えるが……。
いわゆるプログラムピクチャーなので大きな期待をしても仕方ありませんが、大映スタッフの職人芸に支えられた品のよい画作りは見応えがあります。
出演者に目を向ければ、小松方正の味のある敵役をはじめ、賭博師役の長門勇、川津祐介、安田道代など助演により大映映画らしい風格が感じられます。なかでも安田の血のつながっていない母親を演じた浪花千栄子が素晴らしい。
当時人気だった京唄子・鳳啓助やてんぷくトリオのコメディ・リリーフも楽しいし、尼さんやミニスカの賭博師などが登場して大映として精いっぱいのサービス精神も感じられます。
それでも東映の藤純子の出演作に比べるとお行儀のよさが感じられ、娯楽映画として物足りない気もします。東映は任侠映画なので最後は大立ち回りを演じ、観客は「ああ、映画を見たな」という気分になれるのに対し、本シリーズは賭博師なので主人公はそこまで踏み込めないのが難点でしょうか。
余談ですが、この映画のフィルムが退色していて残念でした。主人公の鮮やかな衣装も見どころの映画なのに惜しいことです。