退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

コミック「いちえふ」を読みました

竜田一人のコミック「いちえふ」を読了しました。覆面漫画家による福島第一原発の作業員ルポ。第3巻でひとまず完結です。タイトルの「いちえふ」は福島第一原子力発電所の通称。原発事故以降すっかり一般に知られるようになりました。

いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1) (モーニング KC)

いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1) (モーニング KC)

いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(3) (モーニング KC)

いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(3) (モーニング KC)

自称「売れない漫画家」の作者が、福島第一原子力発電所で作業員として従事した体験を基に描いたルポルタージュ漫画。ユニークな漫画です。カメラは入れない、文章だけでは伝わりにくい作業現場と作業員の日常を臨場感とともに伝えています。

最終巻ではついに原子炉建屋に足を踏み入れて、ロボットを使った建屋内の調査業務に従事しています。ロボットの搬入・搬出やケーブルの取り回し、バッテリー交換などを被曝量を気にしながら作業する様子が生々しく描かれています。未知の世界で新鮮です。

作業現場のほかに作者が本作を売り込む様子も紹介されています。この「いちえふ」は『モーニング』(講談社)などで不定期に連載されていましたが、講談社に持ち込む前に、ライバル会社に断れているところが面白い。目利きはいなかったのか。

当たり前ですが、現場には生身の人間が働いていることが実感できます。また時間の経過とともに作業は着実に進んでいるし、作業環境も改善していることがわかります。しかし前途は果てしないことも同時に感じられます。

さて、この漫画は廃炉作業の全体像を描いているわけではありませんが、現場の様子から世代を超えた長期戦になりそうな現実が伝わってきます。震災から年月を経て,首都圏にいると原発事故のことは忘れがちですが、この「いちえふ」を読んで、ときどきは思いを新にしたいものです。

また「いちふふ」は漫画の持つ可能性を再確認できる作品でもあります。作者はどんな人なのか、そして今後の活動についても気になるところです。

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