退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『赤穂浪士 天の巻・地の巻』(1956)

映画「赤穂浪士 天の巻・地の巻」(1956年、松田定次監督)をDVDで鑑賞。大佛次郎の同名小説を原作として製作された東映創立5周年記念作品。

正統・忠臣蔵ではなく、大佛の「赤穂浪士」を原作しているので堀田隼人と蜘蛛の陣十郎ら四人組が狂言回しとして登場して映画に深みを加えている。

一方、赤穂藩主・浅野内匠頭東千代之介)の切腹や畳替えの場面がないなど、定番の場面がないのでややもの足りない。瑤泉院も出ないし……。

この映画の見どころは東下り大石内蔵助市川右太衛門)と九条家御用人・立花右近(片岡千恵蔵)が対面する場面だろうか。片岡千恵蔵は、内蔵助が江戸に下る際に名を騙る「立花右近」役として別格の扱いで登場する。ふたりの対面の場面は他の忠臣蔵では見られない密度の高い芝居となっていて、DVDのジャケットにもなっている。

ちなみに片岡千恵蔵は、5年後、東映創立10周年記念作品「赤穂浪士」では内蔵助を演じている。

監督の松田定次は、本作を含め3本もの忠臣蔵映画を演出しているが、本作がもっともお気に入りだったという。毎年、年末になると「忠臣蔵」を観たくなるが、やっぱり浪花節全開の大映版『忠臣蔵』(1958)が私のお気に入りだ。