筆者は3期12年にわたり兵庫県明石市長をつとめ、その市政は「明石モデル」をつくり世間の注目を集めた。この本は泉流の政治学のエッセンスが詰まっている。
市政の実績として、たびたび「所得制限なしの5つの無料化」が取り上げられる。
- 子ども(高校3年生まで)の医療費の無料化
- 第2子以降の保育料の完全無料化(保育園・幼稚園・市街の施設でもOK)
- おむつ定期便(市の研修を受けた見守り支援員(配達員)が毎月おむつや子育て用品を直接届ける)
- 中学校の給食費無償
- 公共施設の入場料無料(天文科学館、文化博物館、明石海浜プール、親子交流施設など)
こうした子育て施策の充実を図った結果、人口増、税収増などを実現したという。市長がやろうと思えば、これだけのことが実現できるのは驚きだった。
私の住んでいる自治体と比べると大したものだと思うが、子育てをすでに終わった世代には不公平に感じるかもしれない。また、この実績も局所的なもので周辺自治体から子育て世代を明石市に吸い上げただけで、しょせんパイの奪い合いになっているのではないかという疑念もある。
さらに言えば、この政策を日本に敷衍するために筆者自ら政治に身を投じる気はないのか、とも思った。すでに国会議員をつとめた経験もある筆者は、国政で一政治家のできることできないことが見えているのだろう。
政治に対する熱い情熱は伝わってくるが、このあたりは筆者の限界を示しているように思えた。