先日、映画『ナポレオン』(2023年、監督:リドリー・スコット)を鑑賞する。ナポレオン・ボナパルトの伝記映画。主演はホアキン・フェニックス。
上映時間158分という長尺だが、これで波乱万丈のナポレオンの生涯を描くには短すぎる。おのずと取捨選択を迫られるわけだが、本作ではナポレオン(ホアキン・フェニックス)とジョゼフィーヌ(ヴァネッサ・カービー)のラブストーリーというか愛憎劇が軸に据えられている。
また映画の尺のせいだろうが、重要だと思わえるイベントが丸ごと省略されているなど駆け足にすぎる。コルシカ島時代やイタリア遠征などは全部省略……。また欧米人には当然備わっている背景知識をあてにしているのだろうか、平均的な日本人にはいろいろ説明不足かもしれない。多少予習して行ったほうがいいかもしれない。
それでも、アウステルリッツの戦いやワーテルローの戦いなどの戦闘シーンは、大スペクタル映画として見応え十分である。映画館の大スクリーンで観る価値はある。
この映画の評価は、ナポレオンとジョゼフィーヌの恋愛の描写を受容できるかどうかにかかっているだろう。ナポレオンの伝記映画の正攻法は、フランス革命からのフランス史をおさえて、当時の国際情勢および対仏大同盟をきちんと説明した上での戦闘シーンである。また配下の元帥や将軍との関係もきちんと描かなくてはいけない。
しかし、こうした正攻法は限られた尺では到底無理だということで、ふたりの恋愛にフォーカスしたのはやむを得ないところだろう。まあ面倒くさい背景を措いても、いまの日本映画では望むべくものない大スペクタル映画としては十分楽しめる。
余談だが、正月映画だというので観るのは年明けにしようかとも思ったが、意外に上映館が少ない。いつも行くシネコンでは上映されていなかった。そこで少し遠征したが、そこでも1日1回しか上映されていなかった。やはり日本人には人気のないテーマの映画なのかもしれない。鑑賞しようと思っている人は急いだほうがいい。