退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『骨までしゃぶる』(1966) / 加藤泰監督が明治時代の遊郭の裏表を描く名作

新文芸坐の《映画監督・加藤泰 情念の横溢》で映画『骨までしゃぶる』(1966年)を鑑賞。主演は加藤泰組の常連・桜町弘子。夏八木勲の映画デビュー作でもある。白黒映画。

骨までしゃぶる

明治30年代の洲崎新地。極貧のため郭に売られた貧農の娘・お絹(桜町弘子)は、着物や部屋を与えられて客を取らされる。売れっ子になったお絹は楽しく過ごしていたが、次第に廓の搾取の仕組みがわかってくる。廓の経営者夫婦(三島雅夫三原葉子)はさまざまな口実で遊女たちを借金で縛っていたのだ。いくら働いても自由になれないからくりだ。やがて客のひとりである職人の甚五郎(夏八木勲)から求婚されたお絹は廓から逃げる決心をするが……。


「骨までしゃぶる」(1966) 予告篇

自由を渇望して気丈に遊郭のシステムに立ち向かう桜町弘子のキュートな表情が実にいい。相手役の夏八木勲の押し出しの強さも大したもの。

また洲崎遊郭が見事に再現したセットが見事、加えて久保菜穂子、石井富子、宮園純子、沢淑子が遊女を演じていて廓の雰囲気がよくでている。白黒映画なのが却ってよかったかもしれない。個人的には士族出身だという久保菜穂子に相手してもらいたいが……。

最後は救世軍の助けを得て、お絹は甚五郎と新しい人生を歩みだす。遊郭映画だととかく暗くなりがちだが、本作はハッピーエンドとなりその爽快さが特徴的だ。

加藤泰監督のフィルモグラフィーのなかでは代表作とは言えないかもしれないが、一度は見ておくべき作品。

それにしても救世軍の正体が不詳。いまも神保町に救世軍日本本営があるのは知っているが、当時は駆け込めが借金を踏み倒してもセーフだったのだろうか。そのあたりは謎だ。

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