退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『ラ・ラ・ランド』(2016) / 正統ミュージカル映画風味のカルト映画

早稲田松竹で映画『ラ・ラ・ランド』(2016年、監督:デミアン・チャゼル)を鑑賞。公開時そして名画座でも見逃してたが、映画館の混雑がひどくて閉口しながらもようやく見ることできた。今年のうちに見ておきたかった映画なので満足した。

この映画は、映画『セッション』(2014年)で一躍世に出たデイミアン・チャゼル監督によるミュージカル・ロマンティック映画。題名のとおり、舞台は“夢追い人”が集まるロサンゼルス。女優を目指すミア(エマ・ストーン)と、いつか自分の店を持ちたいジャズピアニストのセブ(ライアン・ゴズリング)の恋の物語。偶然出会った二人は、自分の夢の実現に向って奮闘していくなかで次第に距離を縮めていくが……。

朝の渋滞の高速道路からドライバーが降りてきて、オープニング・ナンバー を歌い踊りだすあたりは正統派ハリウッドニュージカル映画を彷彿させる。この冒頭のシーンだけで観客は圧倒される。レベル高すぎ……。しかしミュージカル映画にしては歌は少なめなのはやや不満だが、印象残る楽曲が世間を席巻したのは周知の通り。デュエットダンスのシーンがたくさんあったのも個人的にはツボだった。いずれ宝塚歌劇で上演されるかもしれない。

ラ・ラ・ランド(字幕版)

ただし、ふたりの下積み時代の仕事がいい加減なのは共感できなかった。カフェのバイトにシフトを拒むミア、そしてレストランで勝手に自分の好きな曲を演奏してクビになるセブ。自分のやりたい仕事じゃないだろうけど、プロならもっと真面目にやれよと思った。もっともこれぐらいの性格でないと成功できないのかもしれない。

それにしてもエマ・ストーンがすごい。ミアはブレイクする前でも発散するオーラを隠しきれない。さらにオーディションで成功への手がかりを掴むシーンは、さすがエマ・ストーンと唸らされる。日本映画では絶対に撮れないニュージカル映画である。

最後は、誰にも必ずあったであろう「人生の岐路」を思い起こさせる、「東京タラレバ娘」みたいというと語弊があるかもしれないが、やや凝った演出になっている。あっさりハッピーエンドでない終わらないところは監督らしい。


La La Land (2016 Movie) Official Trailer – 'Dreamers'

映画としては、二人が成功する過程を省略していきなり5年後に飛ぶのは物足りない。それほど成功するのは簡単じゃないと思うのだが、そうした面倒なことは触れないのがこの映画の持ち味のようだ。

社会問題や人間ひとりひとりに真摯に向きあうというタイプのヒューマンドラマではないが、広いターゲットの観客を満足させるという点では大ヒットしただけのことはある。一度はスクリーンで見ておきたい映画である。

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