タイトルに見て、「日本でただ一度革命を成しえたのは誰なのか?」と思いながら手に取る。編集者の手腕だろうか、上手いキャッチコピーである。
日本史のなぞ なぜこの国で一度だけ革命が成功したのか (朝日新書)
- 作者:大澤真幸
- 発売日: 2016/10/13
- メディア: 新書
その答えは、鎌倉幕府第3代執権・北条泰時(1183 - 1242)である。鎌倉幕府中興の祖であり、御成敗式目(貞永式目)を制定した人物として知られる。なぜ後醍醐天皇でもなく、織田信長でもなく、明治維新の志士たちでもなのか、それは本書を読んでみてほしいが、なかなか面白い。この考えは決して新しいものではなく、たしか山本七平なども同じようなことを書いていたような気がする。
ただ中国の易姓革命、イエス・キリストの革命との対比を通じて、天皇制の本質に迫るという壮大なテーマを新書サイズにまとめて、最後まで飽きさせずに読ませるのは美点。ある意味、現代に通じる日本人論と言えるかもしれない。
いま日本は否応なしに変化を求められている。現状維持ではジリ貧になるのは火を見るより明らか。こうした「革命」が待望される時代であればこそ、泰時の時代に思いを馳せて変革への構想を練ることも意味があるように思われる。