退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】茂木誠『ニュースの"なぜ?"は世界史に学べ 日本人が知らない100の疑問』(SB新書、2015年)

駿台予備校の人気講師がTVや新聞では教えてくれない「100の疑問」をQ&A形式でやさしく解説する。読みやすいので最新の国際ニュースを短時間で理解するには好適な本であろう。

ただし、Q.1からQ.100までの「100の疑問」の答える形式だが、それぞれが独立しているのわけではないので、少なくとも章ごとに通読する必要がある。最初、面白そうな質問を拾い読みしようと読み始めたがその目論見ははずれた。

受験勉強では世界史はただの暗記ゲームになりがちだが、この本のように時事問題と結びつけると面白い。いまになって振り返れば、世界史の先生も生徒が興味を持つようにいろいろ工夫していたのだろうが、とにかく覚えるが苦痛だったことだけが思い出される。

本のなかでなるほどと思ったことをひとつ挙げるてみたい。ゴールドラッシュの時代、アメリ東海岸からカリフォルニアに行くために早くて安い航路はどこか、という話。実は東海岸から大西洋を渡り、アフリカ南端の喜望峰をまわって、インド洋に抜ける。そして日本をかすめて太平洋を越える世界一周のルートだった。パナマ運河がないことに注意。このルートを押さえることが、ペリーが日本にやってきた目的であるというわけだ。知らなかった……。

一方、にわかには納得できなかったこともある。現在の中国の状況は、唐末期に似ているという話。詳細は略するが、唐が滅んだあとの約50年間、中国は「五代十国」と呼ばれる軍閥割拠の状態が続くことになるが、現在の中国も同じような道筋たどっているという予測である。これが的を得たものかどうかはこれからの歴史をみるしかないがどうも疑わしい。

既に評価が定まっている時代のことはなるほどと読み進めていけるが、現代史に近くなってくると著者の主義主張が色濃くなりやや鼻を突く。まあ歴史とはそうしたものかもしれない。毒にも薬にもならない読み物よりはマシということか。

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