神保町シアターの《夏休み特別企画 漫画から生まれた映画たち》という企画で、映画『ア・ホーマンス』(1986年、監督:松田優作)を鑑賞。狩撫麻礼、たなか亜希夫の青年コミックが原作らしいが、こちらは未読。
- 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
- 発売日: 2015/07/08
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当初、別の監督により撮影が進められていたが途中で降板し、主演の松田優作が自らメガホンをとることになったという。Vシネマのようなテイストが全編に感じれる。
暴力団の抗争を繰り返す新宿の街にバイク(ヤマハのSRかな?)に乗って現れた謎の男・風(松田優作)と、昔気質のヤクザである山崎(石橋凌)が心を通わせるという話。石橋凌の演技が意外にいい。石橋のベストかもしれない。
ラスト近くで風の正体はサイボーグだったことが分かる。しかしサイボーグの戦闘能力を示すシーンはいっさいないのは不満。山崎を射殺した実行犯に復讐する場面も殺害現場のシーンはない。その後、当然ヤクザの本拠地に殴りこみに行くのかと思いきや、ひとりバイクに乗って去っていくという謎の展開。映画のカタルシスに欠けるなぁ。「え、これで終わりなの?」と声が出そうになる。
出演者では、前述の石橋凌のほかにはヤクザの幹部を演じたポール牧がいい味を出しているのが特筆できる。しかし手塚理美が演じている山崎の恋人が、ポール牧に乱暴されるシーンがあったが、これも暴行現場は描かれず、「事後」のシーンだけなのは物足りない。ポール牧の変態的な暴行シーンが見たかったなぁ。Vシネマに付き物のエロはいっさいないのは、松田の美学なのだろうか。
映像的には新宿ロケを活かした無国籍感が面白いし、実験的な映像も散りばめられている。松田が撮ると「優作独自の映像世界の片鱗が…」などと言われるがこれは過大評価だろう。映像作家としての松田優作の評価は定まらないうちに、彼は他界してしまったのは残念だが、本作について言えば映画関係の専門学校生でも考えつきそうな映像だという気がする。