少し前に世田谷文学館で開催されていた「日本SF展・SFの国」を見てきました。
文学館なのでSF小説に特化しているかと思っていましたが、アニメーションや特撮映像作品の展示もあり見応えがありました。順路に沿ってざっくりと気になった展示を紹介します。
まず、星新一、小松左京、手塚治虫、筒井康隆、真鍋博ら、日本SFの第一世代と呼ばれる作家たちとともに、日本SFの父・海野十三を紹介していきます。やはり出発点はこのあたりですね。
そして雑誌「SFマガジン」の歴史を顧みるコーナーでは、「SFマガジン」をずらりと、壁一面に展示してあったのは圧巻。表紙絵を見るだけも来た価値があるというものです。表紙を見ていくだけで、戦後日本SFの歴史がわかるという趣向です。絵師の仕事がすごいですね。
あと見どころを言えば、『日本沈没』に関する、半村良から小松左京に宛てた手紙が初公開されたことです。ライバルとして互いに切磋琢磨していた両氏ですが、『日本沈没』の出来栄えをみて半村はペンを置く覚悟に至ったとか。
こうした日本SFの先達のおかげで、日本の十八番ともいうべきアニメーションや特撮に発展していきます。本展示会でも、手塚治虫の「鉄腕アトム」や「ゴジラ」などの日本を代表するSF作品の映像作品が展示されています。個人的には「猿の軍団」の制服がぐっときました。
他には浦沢直樹『20世紀少年』が、どーんと展示されていたのは驚きました。こうした巨匠たちに伍した存在だったは……。すっかりお見逸れしました。『20世紀少年』を未読なのは問題かもしれません(汗)。
順路の最後には撮影可能の展示がありました。「鉄腕アトム」「大阪万博」「ゴジラ」「ウルトラマン」ですか。まさに日本は「SFの国」ですね。
余談になりますが、世田谷文学館の展示会に行くといつも思うことがあります。展示の壁一面のテキストがすばらしいのですが、読み返せないのが実にもったいない。会場限定の図録もありますが、全部網羅されているわけでもない。権利的にむずかしいのかもしれませんが、ぜひ書籍として刊行してほしいですね。
近隣の図書館の蔵書にしてもらえば活動のアピールになりますし、地方の人にも展示の一端に触れる機会ができるのではないでしょうか。最近、図録が一般書籍として刊行される場合も増えてきました。展示会だけでオシマイにしてしまうには惜しいコンテンツです。