退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

西田宗千佳『iPad VS. キンドル』

iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏 (ビジネスファミ通)

iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏 (ビジネスファミ通)

キンドル(Kindle)の登場により、一躍注目を集めている電子書籍ビジネスについて網羅的に知ることができる一冊。私自身もキンドルのユーザーということもあり、電子書籍に関心があり手にとってみた。

以前読んだ、石川幸憲『キンドルの衝撃』は、主に米メディアの現状を伝えていたのに対し、この本は日本固有の事情についても言及していている。タイトルは「iPad VS. キンドル」となっているが、ハードウェアとしての電子書籍端末に留まらずに、もっと広い視野で電子書籍ビジネスについて明晰な分析が述べられていて、内容もわかりやすい。

まず、キンドルの祖先または原型は、2004年に発売されたソニーの電子書籍端末「リブリエ」だったと振り返る。確かに当時、展示会や書店で見かけることがあった。もちろんビジネスが失敗に終わるわけだが、キンドル誕生のために一役を担っていたというのは興味深い。
次に実際にキンドルを使っていて感じることでもあるが、「アメリカ化」と「国際化」は違うという指摘は示唆に富んでいる。英語圏のマーケットは世界中に広がっているが、現在のアマゾンおビジネスは北米だけを対象にしており、国際化されていないというのだ。欧州ではソニーが健闘しているらしい。

たしかに、キンドルでTIMES誌を買う場合でも、US版しか買えなかったりする。他にも英語以外の言語の本を見つけにくかったりして不満が募る。アマゾンには、Mobipocketの経験があるはずなのに、それを生かせないのか残念である。

最後に日本での「デジタル時代の図書館」の構想に触れているのも印象に残った。図書館のヘビーユーザーとしては、大いなる関心事であり、議論の行方が気になる。しかし、本書の最終章で日本での電子書籍ビジネスを展望しているが、普及するのは越えないといけないハードルがあまりに多くて相当な困難が予想される。

最近「日本電子書籍出版社協会」という業界団体の発足を伝えていたが、いったい日本の電子書籍ビジネスはどこへ行くのやらと懸念される。

まあ英語圏での普及は、今後加速的に進みそうだから、興味のある分野は英語で情報集取できるぐらいの語学力は持っていたいものだ。いよいよ日本語はダメかもね。