先週、東銀座・東劇の松本清張特集上映で「天城越え」(1983年、三村晴彦)を観た。松本清張の短編の映画化。三村晴彦の初監督作品。
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この映画は、田中裕子のすばらしさに尽きる。取調べのときの汚れ役と少年と過ごすときの奔放さとの対比が魅せる。とくに雨のなかを容疑者として連行される場面のスローモーションは日本映画史上に残る名カット。女性の撮り方は、師匠である加藤泰のそれを感じさせる。
ただ殺人事件が起こった当時の回想シーンは概ねいいのだが、残念ながら現代劇があまりにチープなのが残念。老いた刑事を演じる渡瀬恒彦などは目を覆いたくなる。
またラストの天城峠にオートバイが入っていくシーンは、やっぱり意味不明。単に時代が流れたことを描きたかったのか。
今夏、フィルムセンターで監督の追悼作品として「愛の陽炎」を観たが、監督の代表作はやはり本作だろう。惜しい点もあるが秀作といってよい。
映画を観ながら、戦前の警察の取調べはあまりに杜撰で、これでは冤罪も起きるよなと思った。ただ「足利事件」などを見ると、現在でもそれほど変わっていないのかもしれない。