退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

グレン・グールド 坂本龍一セレクション

グレン・グールド 坂本龍一セレクション

グレン・グールド 坂本龍一セレクション

坂本龍一が選曲した、グレン・グールド(Glenn Gould)のピアノ曲集。2枚組のアルバムに録音年順に曲が配列されている。ライナーノーツで「バッハは入れないようにと、考えました」と語っているとおり、バッハ以外で構成された選曲がユニークである。とは言っても、最終トラックに1曲だけバッハであるだが―。

グールドといえば、バッハやブラームスに人気が集まり、スクリャービンヒンデミットなどの作品は触れる機会が少ないと思われる。このアルバムではそうした知られざる面にも光を当てている。アルバムを通して聞いていると、いきなりソプラノが響くので驚くが、ヒンデミットの『歌曲集 マリアの生涯』は実にすばらしい。新しい発見だった。

ライナーノーツに収録されている、グールド研究者・宮澤淳一氏との対談も感銘を受けながら読んだ。坂本龍一のグールドへの思い入れが伝わり、グールドが坂本氏にとって特別な存在であったことがよくわかる。また選曲の過程も窺うことができて興味深い。

この類のアルバムには期待を裏切られることも少なくないが、このアルバムはコストパフォーマンスも高く、広く推奨したい。