退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

『君よ憤怒の河を渉れ』(1978)

図書館からDVDを借りてきて「君よ憤怒の河を渉れ」(1978年,佐藤純彌)を見る。西村寿行原作のカルト映画として有名な作品だが、今回が初見だった。名画座でもなかな上映されない。

君よ憤怒の河を渉れ [DVD]

君よ憤怒の河を渉れ [DVD]

北海道が似合う男・高倉健が検事役で主演。高倉が唐突に無実の罪を着せられ、これを晴らすべくひたすら逃亡する。これを追う一匹狼の本庁警部が原田芳雄。前半の追跡劇は、さながら和製「追跡者」。後半は精神病院に舞台を移したサスペンスとなり、怒涛のラストになだれ込むという怪作。とにかく長い。

「劇画タッチ」という表現では、とらえられない凄みというか荒唐無稽さがある。これが、大作に強い「佐藤純彌監督らしさ」というものなのか。

つっこみどころは満載。「北海道で熊を撃つ健さん」「焚き火での濡れ場」「数分のレクチャでセスナを操縦して自衛隊スクランブルを受ける健さん」「新宿に出現する馬の群れ」、そして「ラストの『正当防衛』という名の私刑」などなど。

そしてBGMがすっとんきょうでシーンにまるで合っていないのに注目したい。これが演出上の選曲だとしたらすごいが…。日本映画史上に残る選曲センスだろう。

こんなカルト映画だけれど、中国で大ヒットして8億人以上の観客を集めたというから驚く。これをきっかけに、ヒロインの中野良子は、中国で人気女優となり、日中友好の文化交流大使として活躍している。人生何が幸いするかわからないなあ。

また本作は、永田雅一の復帰作としても記憶されているが、すごい作品を選んだものだ。一度は見るべし。