シネマート新宿のモーニングショウで、「西鶴一代女」(1952年、溝口健二)を鑑賞する。
シネマート新宿には、2つスクリーンがあるが、今回は定員300人ぐらいの大きな方の劇場で上映。もちろんどちらのスクリーンで上映するかは確認して出かけたが、観客10人足らずだった。これは興行的には厳しいだろうが、客としてはなんとなくトクした気分だ。
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本作品は、ビデオでは観たことがあったが、映画館では初鑑賞。やはり、白黒フィルムを映画館で観るのは味わいがあってよい。
この映画では、宮中に仕える女官から、紆余曲折を経て、街娼まで堕ちていくお春の流転の人生を、田中絹江が一世一代の演技で魅せる。まさに役者魂炸裂だ。技巧的には、有名な「長回し」も用いられており見どころであろう。
ただ傑作には違いないが、エピソードを淡々とつなげていく構成は、やや退屈に感じるし、全体としても演出に統一感に欠けるようにも思う。後年、大映で撮影した「雨月物語」「近松物語」に比べると、やはり映像的に物足りない。
終盤まで救いようのない話であるが、「女の幸せ」とは何だろうということを考えさせられる。次々に襲う不幸も、まったくの不可抗力によるものではなく、自ら招きいれた部分もあると思うのだが――。現代に投影してみたくなる作品でもある。