退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『ホドロフスキーのDUNE』(2013) / 「未完の大作」をめぐるドキュメンタリー

新文芸坐で映画『ホドロフスキーのDUNE』(2013年、監督:フランク・パヴィッチ)を見てきた。同監督の最新作『リアリティのダンス』との二本立て。

ホドロフスキーのDUNE [Blu-ray]

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1975年、アレハンドロ・ホドロフスキー監督がフランク・ハーバートSF小説デューン』の映像化を手掛けるも、結局、制作は中止される。この映画は、その顛末を監督本人を含む関係者の証言を集めて制作されたドキュメンタリー映画である。

デューン』の映像化にあたり当時の才能が集められ絵コンテまで出来ていたのに、制作は撮影前に損座してしまう。まあ10時間を越える超大作にするつもりだったというから、採算を考えると仕方なかったのかもしれないがいかにも惜しい。ボツになった映画の企画は星の数ほどもあるだろうが、そのなかで最もよく知られたボツ映画と言えるだろう。

分厚い絵コンテを傍らに置き、ホドロフスキー監督が「この脚本を使って誰でもいいから映画にしてもいい。私の死後でも構わない」というようなことを語っているのが印象に残る。全編を通して、ホドロフスキー監督がドヤ顔で昔を振り返るというテイストのドキュメンタリーだが、不思議と嫌味な感じはしない。

後に同じ原作をデヴィッド・リンチ監督が『デューン/砂の惑星』(1984年)として映像化する。しかしこの映画の評価は決して芳しくなく、リンチ監督自身も作品に納得していなかったようだ。ホドロフスキー監督の企画が流れてから約10年後のことだ。

デューン 砂の惑星 [HDリマスター版] [DVD]

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このドキュメンタリーのなかで、ホドロフスキー監督がリンチ版を見たときの感想を語る場面がバツグンに面白い。「見るのが怖い」といいながら、映画を見て失敗作だと分かった後は「やった!」と勝ち誇ったように大喜びする。他人の失敗を喜ぶのは大人げないなあと思うが、クリエーターとは生来そういうものなのだろう。

終盤では、ホドロフスキー監督が準備を進めていた『デューン』が、『スターウォーズ』を含め以後つくられた多くの映画に影響を与えたことが矢継ぎ早に語れる。集結した才能が成果を発表する場を無くしたまま映画業界に散っていき、他の作品で開花したということか。

それにしても下の予告編にもチラリと写っていた分厚い絵コンテを見てみたいものだ。気になって仕方ない。


Jodorowsky's Dune Official HD Trailer - YouTube