退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『大誘拐 RAINBOW KIDS』(1991) / 娯楽映画を得意とした岡本喜八晩年の傑作

シネマヴェーラ渋谷の《岡本喜八監督特集》で、映画『大誘拐 RAINBOW KIDS』(1991年、岡本喜八監督)を鑑賞。原作は天藤真推理小説大誘拐』。

刑務所から出所したばかりの若者三人(風間トオル、内多勝康、西川弘志)が、和歌山の山林王・柳川とし子刀自(北林谷栄)を誘拐。刀自は、要求する身代金が5000万円だと聞き、100億円を要求するように誘拐犯に命令する……。そこから刀自が主導権を握り、狂言誘拐により自らの財産を奪われたように偽装し、まんまと脱税に成功する、という話。

タイトルの「RANBOW KIDS」は、刀自が誘拐犯を「虹の童子」と名付けたことによるが、単に『大誘拐』の方がよかっただろう。こうした横文字を付けたくなる雰囲気がある時代だったのかもしれない。

映画は冒頭部分は緩慢に進行するが、いったん事件が動き出すとぐっと惹きつけられる。原作の力によるものか、監督の力量によるものか分からないが娯楽映画として十分面白い。難点を言えば、若者三人の演技が主演の北林谷栄に吊り合っていないのが気になるが、仕方ないだろう。

また刀自の登場シーンで、子どもたちが戦争の犠牲になったことを暗示する遺影が映される。これを伏線に、誘拐を偽装して脱税することで国家へ復讐する果たす。反体制、そして反戦のメッセージを忘れないのは岡本喜八監督らしい。


映画「大誘拐 〜Rainbow kids〜」劇場予告