退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【諫早湾干拓】新潮45:国が調整を放棄した「諫早湾干拓」の袋小路

以前、「水門開けても、開けなくても公金が支払わるテイタラク」(2014/06/07)という記事を書いたが、先日、雑誌『新潮45』(2014年8月号)に、「狂ったニッポン」という特集に「国が調整を放棄した「諫早湾干拓」の袋小路」(上条昌史)という小論を見つけたので紹介する。諫早湾干拓の経緯を詳しく説明しながら、国の無策ぶりを批判している。

新潮45 2014年 08月号 [雑誌]

新潮45 2014年 08月号 [雑誌]

まず経緯を復習してみよう。水門を開けても開けなくても一日49万円の制裁金が課せれるという事態になったのは、漁業者と干拓地の入植者との対決の図式のなか、何も決定できない政府にふたつの裁判所が相反する判決を出したためだ。6月12日から支払い義務が発生し、年間で1億7885万円になる計算だ。

相反する判決が確定したのは、当時の菅首相の個人の判断で上告を断念したためである。ミンス政権時の負債である。すっかり信用を失った国が話し合いを呼びかけても、営農者側は「開門を前提とした話し合いには応じられない」と応じていて、事態はデッドロックに乗り上げている。

この稿では、当初から環境破壊などの問題が指摘されながら工事を継続した背景には、政官財の癒着構造があったとする、長崎大学名誉教授・宮入興一のコメントを紹介している。干拓事業の元請け会社から政治献金農水省技官たちの天下り、“御用学者”のお墨付きにより工事が恵贈されたいう。

さらに国は、漁業者.vs.営農者の対立を意図的に煽ったともいう。そもそも、環境アセスメントが不十分なうちに既成事実を作るように干拓地に入植者を入れてしまったのが争いのはじまりだ。両者はいまは利害関係が対立するものの、実は双方とも国の被害者であると指摘する。

これは公共事業の係る利権構造で全国各地でよくみる図式のように思われる。日本では、ダマされるより利権を享受できる立場にいなければならないとバカをみるということだろうか。

この件に対し林芳正農相(当時)は「最高裁に可能な限り早急に判断してほしい」と話しているらしいが、どのような司法手続きで解決を目指しているのかは紹介されていない。確定した判決を覆すことができるのだろうか。いったいどうするつもりなのだろう。

最後に、この干拓地で何が栽培されているかご存知だろうか。この小論によれば、キャベツ中心に営農しているらしい。干拓事業の出発点は戦後の食料不足対策としての水田開発構想だったらしい。時代のニーズにあわない公共事業であっても、事業を行うことが自己目的化した典型的な悪例と言えるだろう。この無様な事態に学ぶことは多い。

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