退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『狼たちの午後』(1979) / アル・パチーノの演技とスキのない脚本を堪能しろ!

新文芸坐の《魅惑のシネマ・クラシックスVol.31 ワーナー・ブラザース シネマ フェスティバル PART5》という企画で映画『狼たちの午後』(1979年、監督:シドニー・ルメット)を鑑賞。ニューヨークのブルックリンで実際に起こった銀行強盗事件を題材した犯罪映画。原題は、Dog Day Afternoonという。これは犬が狼になったわけでなく、dog days とは真夏という意味で、原題は物語の設定が真夏だったことによる。

狼たちの午後 [Blu-ray]

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真夏の暑い日の午後、無計画な3人組がブルックリンの銀行がを襲う。そのうちの1人はすぐに脱落。ソニーアル・パチーノ)とサル(ジョン・カザール)は、すぐに警官隊に包囲されれて人質をとって銀行に籠城する。やがて熱狂する群衆と煽り立てるマスコミのため、ソニーは図らずも「英雄」に祭り上げられてしまうが……。


Dog Day Afternoon (1975) Official Trailer - Al Pacino Movie

イケメンのアル・パチーノも当時すでに40歳代になっていて若者とは言えず、こんな無計画で楽観的な銀行強盗犯を演じるのは無理があるではないかと心配になるが、アル・パチーノは終始圧倒的な演技力で熱く演じきっていて、さすが演技派だと唸らされる。どんどん苛ついていく犯人の姿は必見。まあいい歳して、こんなバカでどうするんだと思わなくもないが……。

脚本も素晴らしい。なんのヒネリもない銀行強盗事件なのだが、強盗犯と人質たちが次第に親しくなっていく様子や、警官とアル・パチーノの駆け引きなどが見事に描かれていてスキもない。ラストは呆気ないが、ニューシネマらしいエンディングは当時の流行だったのだろうか。

主演のアル・パチーノも素晴らしいが、この映画の影の主役は「無責任な傍観者」である大衆だろう。現場にワラワラと集まってきて強盗犯をヒーロー視して無責任に煽るだけ煽る。この時代にネットがあれば、きっとネット上で同じような現象が見られただろう。マスは昔も今も変わってないのかもしれない。そんなことを思いました。

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