退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『血槍富士』(1955) / 封建主義の不条理を描く時代劇映画の傑作

新文芸坐の《日本映画の未踏の頂 巨匠・内田吐夢のダイナズム》で映画『血槍富士』(1955年)を鑑賞。内田監督復帰第一作。主演は片岡千恵蔵

血槍富士 [DVD]

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普段は優しいが飲むと酒乱の気がある主君(島田照夫)、そしてお供として東海道を江戸に向かう槍持ち権八片岡千恵蔵)と源太(加東大介)の一行。この三人組が道中で出会う様々な人たちとの人情話を描く。さらに酒の諍いから主君を惨殺された権八が仇討ちする姿を通して封建主義の不条理を観客に突きつける。

ラストの酒まみれで戦う仇討ちの大立ち回りは圧巻。千恵蔵の映画を見たなという気分になる。

今回注目したのは主君の心理描写である。以前見たときは「ダメな侍だなぁ」としか思わなかったが、道中で市井の人々の触れ合ううちに武家社会が嫌気がさしていたのだろうかとも思った。さらに酒席で絡まれて斬り合いになる場面でも、酔って狼藉をはたらく相手の侍に自分の姿を重ねていたのかもしれない。そんなことを思うのも現代社会も不条理に満ちているせいかもしれない。

でも酒乱はダメ! 絶対ダメ!

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