退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】綿矢りさ『ウォーク・イン・クローゼット』(講談社、2015年)

年末年始、普段はあまり読まない小説でも読んでみようと手にとったのがコレ。重たいのは勘弁という気分だったのでチョイスしました。読書ノートを見ると綿矢りさの作品を読むのは、『大地のゲーム』(2013年)以来です。

ウォーク・イン・クローゼット

ウォーク・イン・クローゼット

収録作品は「いなか、の、すとーかー」と、本の題名にもなっている「ウォーク・イン・クローゼット」のふたつ。

「いなか、の、すとーかー」

川上未映子の小説『わたくし率 イン 歯ー、または世界』のようなタイトルだなぁと思い読み始める。

主人公の石原は東京の美大を卒乗後、故郷に戻り窯を開き創作に励む若手の陶芸家。テレビ番組(「情熱大陸」っぽい)に取り上げるほどの売れっ子。しかし以前から彼につきまとう中年女性のストーカーが現れてから、次第に事態が悪化していく。

状況設定はユニークで面白いが、途中で幼なじみの女がストーカーだと簡単に分かってしまうのは難点か。まあ謎解きミステリーではないのでこれでいいのかもしれない。主人公が男性ということもあり、もう一本の「ウォーク・イン・クローゼット」よりは感情移入ができた。田舎は怖いねえ。

「ウォーク・イン・クローゼット」

清楚なモテファッションのOL早希と素敵な服に囲まれて暮らす幼馴染みのタレントのだりあの友情を描く。ファッション関連のネタが多数散りばめられているが、的を射ているのかいまひとつ分らない。

OLの男友達とのありふれた日常が流れていくと思いきやストーリーは急展開。だりあの妊娠、マスコミからの逃避劇、そして出産までがスピード感をもって描かれる。あまりに非日常感に驚いているうちに終了。昔のコバルト文庫のような展開だなあと思った次第。嫌いなテイストではない。

しかし、この小説に出てくる女性たちののファッションへの執着が強烈すぎて、理解できないなあという根本的な問題は残った。金の掛かりそうな女たちである。
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