新文芸坐の《シネマ・カーテンコール 2015》で、映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(2014年、監督:モルテン・ティルドゥム)を鑑賞。チューリングマシンによりコンピューターの概念を提唱し「人工知能の父」と呼ばれたアラン・チューリングの伝記映画です。
イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 コレクターズ・エディション[初回限定生産]アウタースリーブ付 [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ギャガ
- 発売日: 2015/10/02
- メディア: Blu-ray
第2次世界大戦下の1939年イギリス。若き天才数学者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)がドイツ軍の暗号「エニグマ」の解読に成功する物語が軸になっていますが、その他にチューリングの少年時代や、当時違法だった同性愛で告発される戦後を行き来きしながら進行します。
この映画で光っているのは主演のベネディクト・カンバーバッチの存在感です。彼はBBC『SHERLOCK(シャーロック)』でシャーロック・ホームズを演じたことで知られていますが、この映画での演技も素晴らしいものです。
一方、脚本はかなり弱い。とくに同性愛への踏み込みが甘いのが致命的です。戦時中の栄光との対比として、同性愛で失脚する過程をきちんと描かないと映画として成立しません。また当時のイギリスの倫理観についてももう少し説明がほしいところです。
The Imitation Game Official Trailer #2 (2014) - Benedict Cumberbatch WWII Drama HD
もうひとつ気になったのは、こうした科学モノの映画の宿命かもしれませんが、観客の背景知識がまちまちでどこに焦点を合わせていいのか分からないところでしょう。私などはBombeが動いているのを見ただけで満足しましたが、本音を言えばもう少し技術的な解説があればうれしかった。
上映後カップルが話しているのを聞いていると、女性はエニグマの暗号解読に要する計算量が劇的に減って時間内に暗号解読に成功した名場面の意味がさっぱり分からなかったとのこと。映画のヤマ場なのに……。
そうした意味では映画の出来不出来とは別に観客によって満足度が大きくちがう映画とも言えるでしょう。万人向けではありません。