退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

ドラマ『高校教師』(1993年、桜井幸子版)を見た

ドラマ『高校教師』(1993)を見ました。脚本は野島伸司。主演は真田広之桜井幸子。1993年にTBSで放送されたテレビドラマです。ラストシーンに描かれた禁断の愛の結末は大きな話題になりました。最近、地上波で再放送されたそうですが、今回は週末にHuluで一気に見ました。

テレビドラマの脚本は雑なものが多くもう一度見る気にならない作品も多いですが、野島伸司の代表作とも言える本作の脚本は実に素晴らしい。このドラマの最大の美点は脚本と言えます。

教師と生徒の恋愛・同性愛・強姦・近親相姦・自殺といった社会的禁忌をてんこ盛りにしながら、ストーリーが大きく破綻しないのは見事。野島伸司の作風に拒否反応がある人もいるでしょうが、脚本に力があることについては異論はないでしょう。

本作はテレビドラマとしては珍しく撮影前にシナリオが完成していたといいます。ずっと前のイベントが伏線になっているんど凝った構成になっていて、一気に見ると長編映画のようです。俳優陣もドラマ全体を分かった上で演技できたと思われます。

音楽も秀逸です。主題歌の森田童子「ぼくたちの失敗」が歌詞を含めてドラマにピッタリであるだけでなく、森田の他の楽曲も劇中で効果的に使われています。森田童子の楽曲がドラマ全体を支配していると言ってもよい。最近のドラマではタイアップで安易な選曲が多いのとは対照的です。

出演者では、やはり主演の桜井幸子がすばらしい。彼女はすでに芸能界を引退しているようですが、本作が代表作と言っていいでしょう。桜井幸子といえば、本作の役名である「繭」のセーラー服姿が想起されます。体温のない冷たい感じが体現されていて、狙ってできるものではないでしょうが、役柄と女優のマリアージュというべきでしょうか。

余談ですが、真田広之が演じているのは、繭の相手役で繊細で運動の苦手な生物教師の役ですが、劇中に故郷から上京してきた兄と衝突してもみ合いになるシーンがありました。真田はポロシャツ姿でしたがガチムチの体格は隠しようもありません。ここまでは役作りできなかったかと思うとちょっと面白かったです。

さて20年以上前の日本のテレビドラマが、これほど魅力的に感じられるのは滅多にありません。テレビドラマの金字塔と言ってもいい。まだ見たことがない人はぜひ一度見てください。ノスタルジーを措いても何か感じることがあると思います。オススメです。