退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『キャプテン・フィリップス』(2013) / グローバリゼーションの陰影のなかに"USA! USA! USA!"の掛け声を聞いた

早稲田松竹で映画『キャプテン・フィリップス』(2013年、ポール・グリーングラス監督)を鑑賞。主演は安心のトム・ハンクス

2009年に実際にあったコンテナ船の乗っ取り事件でソマリア海賊の人質となったフィリップス船長を描く伝記映画。

映画冒頭、フィリップス船長が自宅から次の勤務地に赴くなか、妻に「俺の時代はよかったが、これからの世代はきびしい」とグローバリゼーションへの危惧を口にするところが伏線になっている。

さて、いよいよサマリア海賊がコンテナ船を襲う場面。昔のようなガイコツ印を掲げた帆船ではなく、小型の高速船で接近し手製のハシゴを使って銃で武装した海賊4人が乗船してくる。なんとか防戦するが結局制圧されてしまい。海賊のリーダーの「これから俺が船長だ」というセリフが印象的だ。

その後、紆余曲折があった後、フィリップス船長は救命ボートで海賊に人質としてか連れ去られてしまう。せまい救命ボート内での海賊たちと船長の駆け引きに緊迫感に溢れている。心の交流すら感じさせられるところが見どころだ。

そしてついに米海軍が出動し、ネイビー・シールズが揺れている船から海賊3人を一瞬で射殺する。「ゴルゴ13ですか?」とつっこみたくなるが実話だから仕方ない。米海軍が本気を出してヘリ空母まで投入するのを見ると、おもわず「アメリカ万歳!」を叫びたくなる。米国民ならば、たった一人が人質になっただけで、自分のために空母まで投入してくれるなんて感謝感激であろう。納税者冥利に尽きる。やすやすと拉致被害者を出すどこかの国とは大違いだ。

さてソマリア海賊はどのように出現したのだろう。劇中、海賊たちは元は漁民だったが、漁場を他国の漁船に荒らされて食えなくなったことが暗示されている。ソマリア無政府状態になり他国と漁業交渉もできなくなったということか。これもグローバリゼーションの負の影響と言えるだろうか。

冒頭に船長が示唆した現代社会に対する懸念と併せて、ソマリア海賊が出現した背景を考えると、グローバリゼーションがもたらした深刻な闇が見えてくる。


Captain Phillips - Official Trailer (HD) Tom Hanks ...

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