シネマヴェーラ渋谷で「帰らざる日々」(1978年、藤田敏八)を観る。「70年代の青春:鬱屈と混沌と」という上映企画。
1972年と1978年の2つの夏を交錯させる手法で描く青春映画の傑作。主人公が父の訃報を受け帰郷する列車のなかで、6年前の工業高校時代を回想するという形式で話が進行する。
とても叙情的な作品でまさに70年代の日本映画を象徴するような映画。アリスの主題歌「帰らざる日々」がベタな演出に拍車をかけるが嫌味はない。
キャストもいい。永島敏行や江藤潤も好演しているが、目にとまったのは、主人公と同棲しているキャバレーのホステス役の根岸とし江(根岸季衣)。まさにぴったり。そして、ロマンポルノで一世を風靡した竹田かほりも出演していて、いま観ても断然かわいい。
複雑な人間関係を破綻なくまとめる脚本をはじめとするスタッフの職人芸には脱帽。敏八はこうした映画はさすがにうまい。