銀座シネパトスで「東京裁判」(1983年、小林正樹)を観る。上映時間4時間30分を越えるドキュメンタリー映画の大作。とにかく長い映画だが見る価値は十分にある。日本人は一度はじっくり観ておくべきだろう。実写フィルムの迫力は言うまでもないが、佐藤慶のナレーションと武満徹の音楽がすばらしい。
- アーティスト: 東京コンサーツ
- 出版社/メーカー: キングレコード
- 発売日: 2004/08/04
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映画は東京裁判の顛末を描いたあと、東西冷戦において繰り返される戦争の惨劇をスクリーンに映しつつ平和を希求して終わる。平和を願う思いは誰にでもあるだろうが、私がいちばん強く感じたのは、敗戦国とはこれほどかように惨めなものか、そして戦争はやるなら勝たないとだめだ、ということだ。
元来、大日本帝国の指導者だった被告が責任を追及されるべきは、日本を無謀な戦争に導き、国土に多大の損害を出し、国民に塗炭の苦しみを甞めさせたことだろう。その無能さにこそ罪がある。戦勝国に裁かれる前に、その罪を国民に詫びて責任をとるべきであった。
映画の序盤、法廷で大川周明が前に座っている東条英機の頭を叩いたり、奇声を発するなどして退廷させられるシーンはあまりに有名であり印象に残る。ちょうど映画を観た後に『新潮45』(2009年8月号)で、興味深い記事を読んだ。菊地正憲による“速記者は見た!「東京裁判」土壇場の人間学”というルポで、東京裁判に速記者として関わった人や故人の日記を取材した東京裁判の秘話である。そのなかで、女性の速記者が大川の奇行は狂言に思えたと証言していることに興味を惹いた。そのほかにも、このルポは東京裁判の生々しい雰囲気を伝えていて、映画と併せるとよりおもしろい。
それでもやっぱり長い。ヘロヘロになった。家でDVDで観るのがいいかもしれない。