退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

渡辺将人『オバマのアメリカ』

オバマのアメリカ―大統領選挙と超大国のゆくえ (幻冬舎新書)

オバマのアメリカ―大統領選挙と超大国のゆくえ (幻冬舎新書)

この本は、3か月前に入手したが、そのまま積読状態になっていたのを、取り出して読んでみた。大統領就任から100日が経過してやや機を逸した気もしたが、とても面白く読めた。

この本では、今回の米大統領選を、周囲の状況を交えながら詳細に説明しており、全編を通して臨場感に溢れている。筆者は、シカゴ大学で学び、民主党のスタッフとしての経験を持つという。オバマ大統領を選出した大統領選をレポートするのに、日本人でこれほどの適任者はいないだろうと思わせるほど、ディテール豊かである。

ただ、一冊の本としてまとまりは感じられず、どの章から読み進めても支障がないようにも思う。まあ新書だから、それでもいいかもしれないが、一歩踏み込んで、大統領選での知見を踏まえ、アメリカの将来を占うといった章があってもよかったかもしれない。

とはいうが、読者を飽きさずに、たいへん読み応えがある。特に「オバマが副大統領候補の決定をブラックベリーで送信するエピソード」(p.59)、「党大会でのチケット配分の裏話」(p.99)、「大統領選でのオハイオ州の特殊性」(p.117)などは興味深く読んだ。

また第4章「『物語』の政治」は、オバマ大統領の生い立ちや経歴を手短に知り、彼のアイデンティティを多角的に理解するのに有用である。そのなかで、“Not Being Black Enough”と黒人から批判されたエピソードが印象に残る。

積読にしておかずに、もっと早い時期に読めばよかったかな。良い本です。

余談。この選挙を機に、米国の各州の位置と州都を覚えようと思ったが、達成できなかった。いまだによく間違う…。とほほ。