退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

週刊エコノミスト「音楽がタダになる」

週刊エコノミスト(2008.7.29号)の特集「音楽がタダになる」を興味深く読んだ。簡単にまとめる次のようになるだろうか。

近年CDの売上げの減少が続いている。そのためレコード会社の経営を圧迫し、リストラを含む業界再編が加速している。他方、ネット上の音楽配信市場の売り上げは、このCD販売の落ち込みを補うまでには伸びておらず、違法コピーなどの不安要素のため市場の先行きが不透明になっている。このした状況下で、音楽業界は音楽が低価格化・無料化を前提としたビジネスモデルの再構築を迫られている。

確かに、私自身もiPodを使うようになってから、あまりCDを買わなくなった。稀に手元に置いておきたい場合もあるが、ほとんどはレンタルかネット配信で十分である。一枚3000円を越える価格は、消費者側からすると割高な印象は拭えない。実際、ニューヨークでは、蒐集目的のマニア向けの市場を除きCDは店舗から消えてしまったということを聞いたことがある。これが時代の趨勢なのであろう。

それでは店舗側の対応はどうであろうか。この特集の冒頭にはHMV渋谷店の音楽CD全盛期の90年代末からの変貌ぶりが取り上げられている。売上高の落ち込みを受けて、売り場が縮小されているのだ。とはいうものの、個人的にはメガCDショップを散策するのは楽しい(このHMV渋谷店にも先週行った)。なによりも新しい音楽との出会いもあるし、ネットでは少しか視聴できないものが、ここでは思う存分できる。でも店舗でCDを購入する機会が少ない。このことは、ほんとうは心苦しい。

先行きは見えないが、才能あるアーティストが生活基盤を築けずに、他の分野の流出するようなことがないように音楽業界には期待したい。音楽自体のニーズは依然として根強いものがあると思うからだ。