退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】森功『高倉健 七つの顔を隠し続けた男』(講談社、2017年)

2014年に83歳で死去し、伝説の映画スターとなった高倉健(1931-2014年)の人間の本質に迫るノンフィクション。綿密な取材に基づいていて読み応えがある。

高倉健 七つの顔を隠し続けた男

高倉健 七つの顔を隠し続けた男

存命中、「俳優・高倉健」のブランドを大切にして、プライベートを表に出すことを極力避けてきた小田剛一(おだ・てけいち)の生身の姿が赤裸々に描かれてる。ストイックだというイメージが強い俳優だったが、やはりそれだけでは済まなかったこともわかる。

題名の”七つの顔”とあるように、本書は7章構成でそれぞれの切り口で高倉健のプライベートを紹介していく。とくに印象に残ったのは、「女性は恐ろしい」と思わせる次の2つのエピソード。

第一は、江利チエミの異父姉が起こした数々のトラブル。するすると小田家に入り込み、夫婦の信頼を得て家計を握るあたりは三文小説のようでもあるが、これが現実だから恐ろしい。このトラブルが高倉と江利が離婚する一因だとも言われる。夫婦の絆も描かれていて印象深い。

第二は、”謎の養子”の話。病臥にあった高倉を甲斐甲斐しく看護し、最後を看取ったとされる女性である。高倉の死後、膨大な遺産を相続するだけでなく、彼の存在を消したいのかと思うように、車やクルーザーを次々に処分し、世田谷区瀬田の家の一部を取り壊すあたりは鬼気迫る。驚いたことに遺骨を親族に渡すことを拒んでいる。何が彼女にそうさせているのか分からないが恐ろしい。

上の二つのエピドードからだけでも、高倉の人生が決して平坦なものではなかったことを伺わせる。読了後にこう言うのもおかしなことだが、プライベートを隠し続けてきた高倉の死後にこうした暴露本を出すのはどうなのだろうかとも正直思った。

映画と俳優のプライベートは別だと頭では分かってはいても、どうしても色眼鏡で見てしまう。これが高倉がプライベートを表に出さなかった理由でもあるだろう。高倉健の映画が好きな人は読まない方がシアワセな本なのかもしれない。

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