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退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】音真司『Fランク化する大学』(小学館新書、2016年)

筆者は15年間務めた商社を辞めて博士号を取得、2016年3月まで非常勤として5年間教鞭を執っていたという。その教育現場で体験した驚くべき実態を基に大学教育の問題点を指摘する。

Fランク化する大学 (小学館新書 お 17-1)

Fランク化する大学 (小学館新書 お 17-1)

さすがに教えていた大学名は伏せるのは仕方ないが、筆者自身の職歴や博士号を取得した大学を隠す必要があるだろうか。筆者名もおそらく変名であろう。本名を出すと教えていた大学名を「逆探知」されてしまう懸念があるのかもしれないが、いまひとつ釈然としない。匿名で問題提起しても説得力がない。

さらに「一部のトップ校を除いて『Fランク』している」「有名大学以外は現役生しかいない」などと書いているが、一切ソースが示されていないのもどうかと思う。筆者が体験したことにウソはないだろうが、それだけで問題全体を語るのは無理があるように思う。

さらにこうした「Fランク化」現象が起こっている構造的な問題についての切込みも足りない。「大学が多すぎる」というのは事実であろうがそれだけはないだろう。そうした状態を許容している社会に問題があるのではないだろうか。それは何なのか。そして解決策が明示的に示されていないのも残念。学生や教員の心がけでは解決しない何かがあるのではないだろうか。

それでも本書でなるほどと思ったこともある。消費者の視点で大学選びをするべきだという指摘である。確かに大学選びは確かに「高い買い物」であるが、あまり中身は吟味されずに受かった大学から偏差値の高いところを選ぶのが一般的だろう。この本では大学選びについて一定の示唆を与えているので、受験生よりむしろ保護者が読むとよいだろう。

筆者が大学教育に注いだ情熱は伝わってきたが、その後大学教員を辞めているのも腑に落ちない。辞めたのは経済的理由(非常勤講師の薄給)だといい、現在はは大学教員とは関係ない職に就いているという。

大学教育の現状打破のために身を捧げるかと思いきや、あっさりと転進するとはなんとも潔い。結局、商社を辞めて大学教員を選択したのは失敗だったのだろうか。本音を訊いてみたいものである。

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