退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『黒いドレスの女』(1987) / ハードボイルド風味の原田知世主演のアイドル映画

先週、新文芸坐の《追悼 菅原文太 永遠(とわ)に輝け一番星》で映画『黒いドレスの女』(1987年、監督:崔洋一)を鑑賞。菅原文太の追悼上映企画のなかの1本。北方謙三のハードボイルド小説を原田知世主演で映画化。

「逃がし屋」を裏稼業にしているバーテン(永島敏行)は、ある男(菅原文太)を海外に逃す仕事を請け負う。そして拳銃を持った謎の女(原田知世)が現れて、という具合で始まるハードボイルド風味の角川映画

ハードボイルド映画を撮りたかったのか、アイドル映画を撮りたかったのか制作側の意図は分からないが、映画としての出来はかなりひどい。日本人にはハードボイルドはムリなのかもしれない。詳しくは書かないがとりわけ脚本が雑すぎる。ベテランの田中陽造が脚本を担当して、なぜこうなったのか。

気を取り直して、本作を原田知世主演のアイドル映画としてみれば、見どころがいくつか見つかる。赤い衣装でディスコ(死語?)で踊ったり、脈絡もなくプールで水着姿を披露(スタイルいいです)したりするのは、明らかにファンへのサービスだろうが、なかなかいいものを見せてもらった。

そして、なんと知世ちゃんが義父(橋爪功)に強姦されそうになるシーンも用意されている。しかし、角川映画のガードは固いのだ。当時、原田知世は20歳ぐらいなのだから下着ぐらいみせてくれてもいいのに、という思いは見事に裏切られる。がっかり。

また他の見どころとして、夜間のカーチェイスを挙げてみたい。永島、原田、菅原が乗る車が、敵の3台の車に追跡される場面はなかなかの迫力。カースタントが頑張っていて、この映画の数少ない美点。

さて肝心の菅原文太は、海外に逃避行を図るスタイリッシュなヤクザを演じている。菅原文太は「仁義なき戦い」シリーズなどの東映実録路線での強面のヤクザのイメージが強いが、実際は本作のようなインテリヤクザのほうが実像に近いのかもしれない。こうした役をもっと見たかった。