退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

上念司『デフレと円高の何が「悪」か』

デフレと円高の何が「悪」か (光文社新書)

デフレと円高の何が「悪」か (光文社新書)

この本の主張は概ね次のようなことだ。日銀はお金を刷って、お金の供給を増やしてデフレを脱却しろ、ということらしい。つまり流れはこうだ。

  1. お金をバンバン刷ってバラ撒く
  2. 物価が上がりデフレ解消
  3. 雇用も回復してバンザイ!

しかしマクロ経済はこんなに単純なのだろうかという疑問がある。これほど効果絶大な金融政策があればとっくに実施されているだろうし、日銀もまるっきりバカじゃない。

リフレ論だけでデフレを克服できるとは思えない。最近、この手の論争が流行っているのだろうか。通貨供給量だけで物価が決まると考えているのかしらん。こういうのをマネタリストと呼ぶのだったかな。本書のような理屈が大衆の支持を集め、「もう日銀法改正しかねーよ」という流れにならなければいいのだがと心配してしまう。

まあ読み物としては、わかりやすく書いてあり、その手腕には感心した。とくに昭和恐慌をなぞっているところは、なかなかおもしろかった。

筆者は経済の専門トレーニングを受けてないと公言しているが、それがあやしい言説を流布してもかまわないという免罪符にはならないだろう。いまからでも専門教育を受けたらいかがだろうか、と余計なことを考えながら読了した。