- 作者: 井上章一
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 1995/12
- メディア: 文庫
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この本は、解説にあるとおり、「美人」を論じたものではなく、丹念に掘り起こした「美人を論じた言辞」をまとめたもので、最後の2章ぐらいに少し著者の考えらしきものがでてくるだけで、著者自身の意見主張が前面に出てこないところが特徴である。江戸から現代に至るまでの文献からの引用がやたら多くて、調査レポートのような味付けになっているのは好みがわかれるかもしれないが、じっくり読む時間があったせいか興味深く読んだ。
まあ男は皆、美人好きで面食いだという広く流布されている言説が文献による検証の後に確認されているので、不美人の女性にとっては、こうした冷たい現実を追従するだけに終わるおそれがある。ある意味では、救いのない残酷な書といえるかもしれない。
この本は単行本として刊行されたのは、1991年で、既にやや古くなってしまった。その後の「美人」を取り巻く言説の変遷に関心があるし、とくに現代の大学生などの若い世代は、美人をどのようにとらえているのかは興味深いところだ。