退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

レイモンド マンゴー『就職しないで生きるには』

就職しないで生きるには

就職しないで生きるには

現代日本における「非正規労働者でも生きる」「ひきこもりでも生きる」といったノウハウを期待して読むと裏切られるだろうが、70年代後半のアメリカの雰囲気を楽しめる人にはおすすめ。結構おもしろい。コカインもスパスパやっています。

筆者自身の本屋としての起業経験や各地の企業家への取材をまとめたビジネスものだ。話が散漫ではっきりとはしないけれど、時代としては、ヴェトナム戦争、ウォータゲート事件を経て、レーガノミックス(Reaganomics)に基づく経済施策が実施されようかという時期だろうか。ちょうど面白い時代だったかもしれないが、現代社会にそのまま役に立つ内容でもない。

興味深かったのは、自身は奔放な生活を送っていても、子どもにはできるだけの教育を受けさせようとしているところ。そして最後に「物書き」という職業の自負を語る場面。

翻訳はちょっと読みづらいところもあるが、昔はこの程度の翻訳本はたくさんあったような気もする。原文自体がラリっていたのかもしれないと思って、Google Book Searchで検索したが、残念ながら本文は載っていなかった。ちなみに原題は、“Cosmic Profit: How to Make Money Without Doing Time”という。「ほんものの利益」というところか。

思い切った邦題だけど、それがいまの日本に時流に合って、増刷になった模様。著者がいちばん驚いているかも。