退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『彼らが本気で編むときは、』(2017) / LGBTをテーマに据えた話題作

新文芸坐で映画『彼らが本気で編むときは、』(2017年、監督・脚本:荻上直子)を鑑賞。併映の宮沢りえ主演『湯を沸かすほどの熱い愛』を目当てに出かけたので期待せずに見た。というのも、前作『レンタネコ』がリアリティゼロだったこともあり、荻上監督作品に苦手意識があったから。しかし本作はLGBTや家族問題など現代社会に向き合った映画だったので、ずいぶん変わるものだと思った。

トランスジェンダーのリンコ(生田斗真)と彼女の心の美しさに惹かれすべてを受け入れる恋人のマキオ(桐谷健太)のカップル。そのふたりの前に、マキオの姉である母親ヒロミ(ミムラ)に捨てられた少女トモ(柿原りんか)に現れ、3人の共同生活が始まる。

映画チラシ 彼らが本気で編むときは、 生田斗真

LGBTやネグレクトといった現代社会の時事的なテーマに堂々と正面から取り組んだ作品で好感が持てた。リアルにこうした人たちと接点がない人でも擬似的に体験を共有できるかもしれない。家族とは何か、幸せとは何かということを考えさせられる映画でもある。

出演者では、優しさに満ちたトランスジェンダーを演じた生田斗真が話題になったが、個人的にはリンコを差別する、トモの同級生の母親・ナオミを演じた小池栄子が存在感があってよかった。リンコを忌み嫌い、トモがふたりと暮らしていることを児童相談所に通報するイヤな奴。出番が多いわけでもないが強い印象を遺した。

タイトルにある「編む」というのは何かと思ったが、3人ひたすら「ある物」を編んでいる。何かイヤなことがあると、その思いを編み込むようにひたすら編むという描写が繰り返される。「ある物」が何かはぜひ映画で見てほしい。

そしてトモの母親が帰ってきて共同生活は終わりを告げる。リンコとマキオは結婚してトモを養子にしようとするが母親が納得するはずもなく、結局トモは母親に引き取らて元の生活に戻る。ネグレクトするようなダメな母親が生活態度を改める様子が描かれて、少しだけ明るい未来が示されて映画が終る。後味のよい映画である。


生田斗真がトランスジェンダーの女性に『彼らが本気で編むときは、』予告編

劇中トモがコンビニのおにぎりに激しい拒否反応を示すシーンがある。子どもにコンビニおにぎりを与えづつけると、本当に受け付けなくなるのか分からないが、何でもコンビニに済ませるのも考えものだなと、他人事ながら思った。

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