Huluで映画『柘榴坂の仇討』(2014年、監督:若松節朗)を鑑賞。浅田次郎の短編の映画化作品。
桜田門外の変(1860年)で大老・井伊直弼(中村吉右衛門)を守りきれなかった近習・志村金吾(中井貴一)に対し、彦根藩は切腹を許さず主君の仇討ちを命じる。仇の水戸藩士を探し探しまわるが見つからず時は流れる。
事件から13年経ち明治新政府の改革により彦根藩は既になく、武士も姿を消していた。時代が流れるなか事件に関わった水戸藩士は次々にこの世を去り、最後のひとり佐橋十兵衛(阿部寛)を残すのみ。十兵衛は刀を捨て人力車の車夫として生きていた。
司法省の役人となっていた親友の助けにより、金吾はついに十兵衛を見つける。十兵衛の人力車に乗った金吾は車を走らせ、柘榴坂(ざくろざか)を登り切ったところで一騎打ちになる。金吾はいままさに十兵衛を討ち取るところまで追いつめるが、「新しい人生を生きてくれ」と告げて仇討をやめる。二人はそれぞれの愛する人のもとの帰っていく。
ざっくりこんな話だ。冒頭の桜田門外の変の立ち回りで惹きつけるが、短編がベースになっていることもあり小さくまとまった映画だ。中井貴一と阿部寛の両看板でそれなりに見れるのだが何か物足りない。「イイハナシダナー」といったところ。
ユニークだと思ったのは江戸時代から明治時代の過渡期を描くシーン。日本社会が西洋化していき服装も洋装になっていくなか、中井貴一が扮する金吾だけが従来の侍の出で立ちで近代化された街を歩く映像が面白い。また小さなエピソードだが、かつての支配階級だった侍が成金にバカにされるも、元・侍たちが集まってきて逆に成金を懲らしめる場面は胸がすく。
配役では十兵衛が長屋で懇意している母子家庭の母親役は誰だろうと思いながら見ていたが、元宝塚歌劇の真飛聖だった。時代劇に溶け込んでいい雰囲気だったのはヅカ的にはうれしい発見だった。