退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『岸辺の旅』(2015) / わかりやすい黒沢清最新作

新文芸坐の《昨年の邦画を振り返る毎年春の恒例企画 気になる日本映画達〈アイツラ〉2015》で映画『岸辺の旅』(2015年、監督:黒沢清)を鑑賞する。原作は湯本香樹実の同名小説。目当ては併映の塚本晋也監督『野火』だったので軽い気持ちで見始める。

ピアノ教師の瑞希(深津絵里)が死んだ夫・優介(浅野忠信)と旅をする物語。「さようなら」を伝えて愛する人との永遠の別れを描くラブストーリーらしい。

3年間失踪していた優介が突然瑞希のもとに戻ってくるが、彼はすでに死んでいると伝える。瑞希は混乱するが優介が旅に出ようと持ちかけ、その言葉に従いふたりで旅に出る。

旅のなかで新聞配達業を営む老人(小松政夫)やピアノの少女に出会うが、いずれも死者でこの世の者ではなかった。そうした経験を通して瑞希は旅の意味を理解していく流れは見事。ピアノの少女が奏でるピアノが美しい。

旅の途中、優介宛の手紙をめぐりケンカとなり、瑞希は生前優介と関係を持っていた女・朋子(蒼井優)にひとりで会いにいく。朋子のふてぶてしい態度は、蒼井優の地ではないかと勘ぐりたくなるほど怖い。これこそホラー。

その後、山村に向かう。そこで優介は住民相手に私塾を開いていた。アインシュタインなどを講釈している優介の姿はなかなかいい。その村でもやはり働き手のタカシを失った家族たちがいた。すでに死者であるタカシの現世への執着を見せられたふたりは旅の終わりを決意する。

そして旅の終わりの場所にたどり着く。最後にふたりでセックスして永遠の別れを受け入れる。最後なんだから深津は脱げよと思ったが露出は背中だけ。最近の女優は脱がないらしい。

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まあそんな話です。黒沢清作品としては分かりやすいので万人向けと言えるでしょう。夫婦愛を描いたラブストーリーと聞いたときは日和ったかと思ったが、新聞配達の小松政夫を訪ねるエピソードで、ある日突然小松が消えて店舗が廃墟になってしまうシーンは黒沢清らしい。やっぱり廃墟は外せないらしい。少しホッとした。

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